指令室便り
Letter from 119 Communication & Command Division

 無機質な壁とコンピューター機器に囲まれた通信指令室であっても、それを動かすのは血の通った人間です。
 皆さんからの緊急通報は、命のリレーのスタートサイン。サイレンとともに出動する消防・救急・救助隊と同じ緊張感を持って“早く消してくれ””無事に助けてくれ“と思いながら電話でのプロトコール(口頭指導)や、部隊運用、支援情報の提供、病院選定などを行い、スムースな災害対応ができるようにするのが私たちの仕事です。
 深刻な災害現場からの声、命のリレーが見事にバトンタッチされ、社会復帰にゴールした声などを皆さんとともに分かち合いたいと思いこのコーナーを作りました。

電話の向こうでは『やったー』 電話のこちらでは『ガッツポーズ』
S市一般住宅からの119番通報

  119受付ボタンを押すと同時に、
女性
「早く救急車来てください。大変です。」
  との若い女性の絶叫。
指令 「誰がどうしたんですか?」
  のこちらの問いかけに
女性
「おばあちゃんがメロンを喉につまらせて、顔が真っ青で息をしていないんです。」
  住所と氏名を確認後、
指令救急指令を発し救急隊に内容を無線で送る。無線救急隊
再び先ほどのお宅へ電話。
指令 「消防局通信指令室の○○です。救急車は今そちらへ向かっています。これからおばあちゃんを助けるため、あなたにやってもらいたいことがあります。いいですか?」
女性
「わかりました」
  こういう時はこちらが強いリーダーシップを取らないと、家族の変貌に気が動転している身内は何をして良いのかわからない。電話口の彼女は先ほどよりも少し落ち着いた様子。
受話器の向こうでは、もう一人の女性の声。母どうやら電話口の娘の母親らしい。
指令 「おばあちゃんの横にいるのはあなたのお母さん?」
女性
「はい」
指令 「それではこれから私の言うことをお母さんに伝えてください。おばあちゃんの口を開けて何がつまっているか見てください」
  女性「おかーさん 口開けてー 何かつまってるー?」母
女性
「見えません。」
指令 「おばあちゃんは床にあおむけ? じゃぁ体を横向きにして、あごを上に上げてくれる?」
  女性「おばあちゃんを横に向けて、あごを上げてって・・・」母
指令 「そしたらおばあちゃんの背中を平手で3〜4回強くたたいてください」
  女性「背中をたたいて もっと強く」
   バシッ バシッ バシッ 母
女性
「出てきません。」
指令 「じゃぁ あなたがおばあちゃんの体を横向きにおさえて、あごを上げてください。そしてお母さんにもう一度背中をたたいてもらってください。受話器はこのままでいいです。」
   バシッ バシッ バシッ バシッ バシッ バシッ 母
  女性
「あー出てきたー。メロン出たー。やったー。」
女性
「あのー出ましたメロン。おばあちゃんフーって息しました。」
指令 「おばあちゃんの息 吸ったり 吐いたりしてますか?」
女性
「はい」
  救急車受話器の向こうに救急車の音。
固唾を飲んで心配していた隣の指令員が、異物除去・呼吸再開を救急隊に伝える。
指令 無線救急隊
指令 「今 救急車着きましたね? 後は救急隊に任せてください。ご協力ありがとうございました」
女性
「ありがとうございました」
この後、おばあちゃんは何事もなかったように顔色が戻り、救命士がステートで肺音聴くも左右異常なし、しばらく予後観察するも異常なし。ということで救急隊からは、
救急隊無線「80歳女性、呼吸安定、予後良好のため不搬送 現場引き揚げ」カシッ
指令無線「松本広域消防 了解」カシッ
指令室の皆は思わずガッツポーズと相成った訳です。
これもいち早く通報し的確に伝達してくれた娘さん、勇気を持ってこちらの言うことにアクションしてくれたお母さん、生きる望みを捨てなかったおばあちゃん。こういう経験と絆で結ばれた祖母・母・娘ってきっと強いんだろうなーと思います。
おばあちゃんを救うために、母と娘・指令室の皆・出場した救急隊員総勢10名が命の鎖をつないだ瞬間でした。



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