ドクターカー

斜めを向いたドクターカーの写真

救急現場や搬送途上において、救急患者に医師による救急処置等を行うため、高度医療資器材を積載し医師の搭乗した高規格救急自動車がドクターカーです。

導入経過と運用形態

昭和54年5月から当時の自治省消防庁が中心となり『ドクターカー運用研究会』が設置され検討が始められた。昭和56年7月、消防庁長官をはじめ21名の消防関係者により、欧州救急業務視察団が結成され、イギリス、フランス等の代表都市の救急システムの実態を視察した。
その結果、フランスの『SAMU』という緊急医療援助組織で、大型の救急車に救急医療資器材を積載し、医師も搭乗して現場出場するというシステムに注目した。この報告から『我が国のドクターカーシステム』の構築に向けての試験運用が開始されることとなった。このような経偉により、昭和57年5月に当時の自治省消防庁より試験運用として松本市消防本部(現在の松本広域消防局)と宇都宮市消防本部が選定された。

運用開始にあたり、松本市医師会、信州大学医学部附属病院の全面的な協力の下、行政を含めた各関係機関の代表により組織されたドクターカー管理運営委員会(後の松本広域圏救急医療連絡協議会へ発展)を設立し、365日・24時間体制による運用形態の確立を図った。

本システムを支える基幹病院として、信州大学医学部附属病院と社会医療法人財団慈泉会相澤病院がある。ドクターカーは、信州大学医学部附属病院から2.4km(緊急走行3分)の位置にある松本広域消防局本郷消防署に常駐しており、平成11年の車両更新時から一般救急と併用した運用形態に変わっている。

ドクターカーの出場にあたっては、ホットラインで通信指令課から出場を要請する。搭乗医師は、直ちに病院の救急口からドクターカーに搭乗し救急現場へ向かう。収容病院は、ドクターカーの基幹病院にこだわることなく、直近もしくは傷病者に最も適した病院が選択される。

本システムが長期間にわたり継続運用されている大きな要因として2点挙げられる。
1つは、搭乗医師の人員確保という点において医師を多く抱える信州大学医学部附属病院が協力医療機関として存在する点。
もう1つは、松本広域圏救急医療連絡協議会を早期に設立し、地域救急医療の問題解決の場として位置づけている点にあると考えられる。

ドクターカー管理運営委員会は、この協議会の中の専門部会として位置づけがされており、圏域内の3つの医師会、2つの基幹病院、広域連合及び管理市の代表により構成されている。近年の救急業務の高度化及び社会環境の変化等を鑑み、出動基準の見直し、消防・防災ヘリコプターへの医師搭乗等、時代に見合った体制づくりの検討を重ねている。

今後も『救命』という目標がある限り全ての住民に対して等しく、より高度な救急サ-ビスの提供ができるよう消防機関と医療機関の連携強化を図り高度救命処置体制の確立を図っていくものである。

ドクターカーの歩み

年月主な出来事
昭和54年05月自治省消防庁が中心となり『ドクターカー運用研究会』を設置。
昭和56年07月欧州救急業務視察団が視察を実施。
昭和56年10月ドクターカー運用について信州大学医学部附属病院と合意。
昭和56年12月自治省消防庁へドクターカー導入の実現について打診。
昭和57年01月官報速報でドクターカーを松本市及び宇都宮市両市へ配置するとして発表。
昭和57年05月信州大学医学部附属病院においてドクターカー搭乗医師(13科48名)の24時間体制が整備。
初代ドクターカーが自治省モデル事業として日本宝くじ協会から寄贈。
昭和57年06月ドクターカー運用基準が策定され運用開始。(S57.06.10)
昭和57年09月『救急の日』制定。
昭和58年04月ドクターカー運用委員会規約が制定。
ドクターカー初の県外出場。(八王子市)
昭和58年06月救急応援協定にドクターカーの東筑摩郡2町8村への出場体制について定める。
昭和58年07月米国カナダ救急システム等調査団に参加。
昭和59年03月第1回ドクターカー運営委員会開催。
昭和59年06月慈泉会相澤病院医師24時間体制の確保。
昭和62年12月自治省にドクターカー導入調査研究委員会を設置。
昭和63年10月『消防機関におけるドクターカーの導入及び管理運営に関する調査研究委員会』が信州大学医学部附属病院において開催される。
平成02年06月二代目ドクターカー、日産サニー松本販売(株)より寄贈。
平成04年10月ドクターカー10周年事業を開催。
平成06年05月救急救命士による高規格救急自動車運用開始。
平成06年06月松本市中毒事故(松本サリン事件)発生。
平成07年02月安曇村中の湯水蒸気爆発事故発生。
平成07年09月『松本広域圏救急医療連絡協議会』設立。
平成11年02月『臓器の緊急搬送』に初の摘出臓器搬送で、ドクターカーが出場。
平成11年06月二代目ドクターカーを更新。
平成11年12月救急出場件数、年間1万件突破。
平成14年06月ドクターカー20周年。
平成14年11月ドクターカー20周年事業を開催。
平成17年10月信州大学医学部附属病院高度救命救急センターに搭乗医師を要請。
平成21年01月三代目ドクターカーを更新。
令和02年08月松本広域消防局救急隊1隊以上及び医師1人以上をもってドクターカーを編成することとなりました。